― アスタチン211を用いた猫の治療における獣医療スタッフの被ばく線量を評価 ―
群馬県立県民健康科学大学 診療放射線学部4年の大沼香太さんが参画した共同研究の成果が,国際学術誌『Frontiers in Veterinary Science』に掲載されました。
北里大学獣医学部の柿崎竹彦准教授,量子科学技術研究開発機構(QST)の坂下哲哉上席研究員,本学診療放射線学部4年の大沼香太さんと,その指導教員である大﨑洋充教授らの共同研究グループは,次世代の標的アルファ線治療として注目されるアスタチン211(211At)を猫に投与した際の,獣医療スタッフの外部被ばく線量を定量的に評価しました。
・研究の概要
本研究では,実際の猫のCT画像をもとに3Dプリンターで作製した「簡易猫ファントム」と,放射線輸送モンテカルロシミュレーションコードPHITSを組み合わせ,211At投与時の獣医療スタッフの被ばく線量を評価しました。ファントムによる実測とシミュレーションを比較することで,診療時のさまざまな場面における被ばく線量を推計しました。
・主な研究成果
- ◆ 猫のCT画像をもとに作製した3Dプリント猫ファントムとPHITSシミュレーションを用いることで,211At投与時の被ばく線量を定量的に評価しました。
- ◆ 獣医療スタッフが受ける1治療あたりの実効線量は最大でも0.91 μSvと推計され,眼の水晶体や皮膚の等価線量も1.11 μSv以下でした。
- ◆ 薬液の準備,投与,保定,ケージでの観察などを想定した診療シナリオにおいても,年間被ばく線量は国際放射線防護委員会(ICRP)が勧告する職業被ばく限度を大きく下回る水準であることが示されました。
・今後の展開
本研究で得られた知見は,獣医療における211Atを用いた標的アルファ線治療の導入に向け,放射線防護に関する制度やガイドラインを検討する際の基礎資料となることが期待されます。また,本研究の評価手法は,猫以外の動物種や他の放射性核種を用いた治療への応用も期待されます。
・論文情報
Sakashita T, Onuma K, Sugasawa A, Sasaki I, Sasaki F, Daisaki H, Ishioka NS, Ito N, Kakizaki T. A simplified feline phantom and Monte-Carlo simulation can be used to evaluate radiation exposure to veterinary staff during [211At]NaAt treatment. Front Vet Sci. 2026 Aug 7;13:1897774. doi: 10.3389/fvets.2026.1897774.




