群馬県立県民健康科学大学 > 学生に読んでほしい本 > 生命の誕生と進化 大野 乾 東京大学出版会 1990年
生命の誕生と進化 大野 乾 東京大学出版会 1990年
書名からも予想されるように遺伝子とそれに関する用語がふんだんに出てくるので敬遠されるかもしれない。ただ、全体にザット目を通して学術用語を記号に置き換えるような読み方をすると、身近な社会現象の基本がみえてくるような気がする。
「遺伝子重複機構による一創造百盗作」は、著者の考えの根底をなすもの。多細胞生物の体作りと、その基礎となる遺伝子の重複の不思議さを端的に表現すると、本書の「一創造百盗作」に勝るものはない。身近な「繰り返し」には音楽、絵画、言語構成、そして生物時計(時間)もと、我々の体も活動も遺伝情報の繰り返しと無縁ではないようだ。
「盗作」とはいかにも安直な表現だが、著者の書き様は真面目なもの。「盗作」せざるを得ない程切羽詰まった状況を生物進化は経験したのか、「創造の苦労」を遺伝子自身が記憶した故に「盗作」に走るのか、遺伝子によって生かされている我々の人間らしさがここに始まる。
診療放射線学部 教授 神宮司洋一 (請求記号 461.6 オ)
2012年10月05日