群馬県立県民健康科学大学 > 学生に読んでほしい本 > 青が散る 上・下 宮本 輝 文芸春秋 1985年
青が散る 上・下 宮本 輝 文芸春秋 1985年
この物語、「青が散る」は、とある新設大学のテニス部が舞台である。主人公・燎平は、ほぼ成り行きでテニス部に入部することになった。入学後、明確な目標を見出せそうになかった燎平は次第にがむしゃらに、しかしどこか醒めた心でテニスに没頭していくのだった。燎平と仲間たちとの賑やかな出会いや交流、奮闘の日々や突然の悲しい別れ、そして、我の強さと脆さを合わせ持つ、美しい夏子への一途な思いが鮮やかに描かれている。
人生は、四季にたとえられることがある。皆さんが今まさに過ごしている人生の季節は、うららかな春だろう。五行思想においては、春には「青」の色が当てはめられていたようだ。すなわち「青春」である。この物語のタイトルに冠せられている「青」は、燎平たちの青春を象徴する色なのかもしれない。
いまは遠く青春の季節から遠ざかってしまった私でも、手に取るたび、どこか覚えのある切なさや焦り、そして輝かしさを容易に思い起こすことができる。皆さんにも、移ろいやすい季節・青春を謳歌してほしいと願う。
看護学部 講師 中野あずさ (請求記号 913.6 ミ 1 913.6 ミ 2)
2012年10月05日