群馬県立県民健康科学大学 > 学生に読んでほしい本 > サラバ!上・下 西加奈子 小学館 2014年 【2016年度推薦】
サラバ!上・下 西加奈子 小学館 2014年 【2016年度推薦】
この物語の主人公・圷(あくつ)歩は、イランで生まれ、大阪に住んだ後、父の海外赴任でエジプトに暮らす。優しい父、母親らしいとは言えない母、周囲から注目されたいがためにぶっとんだ行動をとる姉の中で、歩は自己主張をせず、姉を軽蔑して生きる。やがて、一家は離散する。歩は、親友と別れ、恋人に裏切られ、仕事がなくなり、髪もなくなり、自我が崩壊し、人生が転落していく。
「大切なのは、人が、ひとりひとり違うことを認めることだ。」「芯を持ちなさい、歩。」「あなたが信じるものを、誰かに決めさせてはいけないわ。」という言葉が印象的でした。これは、当事者になることを避け、常に一歩引き、価値観を他者に委ねようとする現代日本人にむけた著者のメッセージなのかもしれません。さらに、この物語に登場する人物は、生き生きと個性的に描写されています。自分の人生は一度きりです。ですが、本を通して様々な人の人生に触れられることを皆さんにも楽しんでいただきたいと思います。
看護学部 助教 清塚遊 (請求記号 913.6 ニ)
2017年03月08日