群馬県立県民健康科学大学 > 学生に読んでほしい本 > 海と毒薬 遠藤周作【著】、講談社、2011年【2025年度推薦】
New 海と毒薬 遠藤周作【著】、講談社、2011年【2025年度推薦】
◆リアリティの頂点
高校生の受験の時期に父から進められて読んだのがこの作品を知る最初のきっかけだったと記憶しています。遠藤周作氏はクリスチャンであり、どのような思想を持ちながら執筆されたストーリーなのか気になりましたが、宗教色は一切感じないものでした。その代わりに、明確な場景描写と言語表現に惹かれた覚えがありますし、現在も時々思い出した時に本作を読むとその都度新たなインパクトがあり、我々医療にかかわる人材が患者さんに向かう際の姿勢や倫理観について常に問いかけてくれるように感じます。それだけこの作品がリアリティに富んでいるということなのだと考えられます。
内容は一人の武骨に見える医師の診療場面からスタートします。不愛想なのに腕が立つ、そんな印象を持たれるこの医師にはある秘密が隠されていました。第二次世界大戦下での大学病院における“ある”出来事を題材にした半ノンフィクションのような物語ですが、現代からするとフィクションのような奇妙さを持ち、人間の極限状態では倫理も価値観も正常な判断ができなくなるような、静かではありますが強烈な場景描写は強い恐怖を感じます。
しかし患者さんに対峙する医療人には絶対に読んでほしい示唆に富む名著だと考えられます。なお本作は映画化もされているので、現在の有名俳優たちの若かりし姿も観ることができます。是非作品を手に取ってみてください。
診療放射線学部 准教授 山﨑 真(請求記号 913.6/エ)
2026年02月27日




